夫が退職勧奨を受けてすぐ、ネットで50代中高年の再就職の現実を探して回った。
以前の記事にも書いたように、体験談のようなものはほとんどみつからなかった。
知恵袋や教えてgooなどでの質問サイトにあるのは、仕事が決まらない、どうしよう、地獄だ……といった、果てしなく気分が落ち込むような書き込みばかり。
そんな中、たびたび目にしたのが
50代になったら次の仕事が決まるまで、絶対に会社を辞めちゃいけない。
退職勧奨を受けても、それまではしがみついているべきだ。
といったアドバイス。
なるほど、と思って夫にその話しをしたのだが、結局わが家では仕事が決まる前に会社を辞めることになった。
目次
正論編
50代に市場価値はない
まず大前提として、一部の超優秀な人を除いて、普通の50代中高年には転職市場での価値はほとんどないと思っておいたほうがいい。
やれ近頃の高齢者は元気だの、65歳まで現役で働けるだの言ってみたところで、企業はそんな風にはとらえていない。
そのまま同じ会社にいたところで、55歳をすぎれば給与は2~3割減、運良く65歳まで働けたとしてもその時の給与は半分から1/3になると言われているくらいなのだ。
そろそろ給与を減らさなくっちゃね、と世間が考え始める年齢に突入した50代中高年を、あえて新たに雇用しようと考える企業がどれだけあるというのだろう。
辞めてはいけない。
しがみつけば、最低限の給与は保証される
退職勧奨を拒否し、ほかの部署に異動になったとしても、毎月の給与は保証される。生活に困ることは一切ない。
えっ、つらい立場に置かれる?
でも、考えてもみて欲しい。再就職した職場がつらくないなんて保証、どこにあるというのだろう。
今よりずっと給与が下がるかもしれない(いや、かなりの確率で下がる)、未経験の職種だったらなら自分よりずっと年下の上司に頭を下げなくてはいけない。そもそも50代をやとってくれる会社なんて、人の定着しないブラック企業の可能性すらあるのだ。
辞めてはいけない。
生活のために我慢する
とにかく生活しなくてはいけない。
会社を辞めてからの再就職活動は、1日でも早く決めようとする焦りとの戦いだ。このまま決まらないんじゃないかと、底なし沼を覗き込むかのような不安とも戦わなくてはいけない。
不安と焦りのにじみ出た顔で面接試験にのぞんでみたところで、良い結果など出るはずもない。人にはある程度の余裕ってものが必要なのだ。自ら退職しなければ、
とりあえず仕事はある。
生活には困らない。
若者のようにすぐに次の仕事が決まらない50代は、この二つを武器にゆっくりと仕事を探すべきなのだ。
だから。
辞めてはいけない。
現実編(わが家の場合)
辞めてはいけないと頭の中では理解しつつも、それでもやはり辞めざるを得ない状況というものもある。
ほぼロックアウト状態
夫は外資系企業で働いていたので、日本の企業とは退職勧奨のレベルが違うかもしれないが、退職勧奨を言い渡された1週間後には、事務所に入ることもできなくなった。
事務所のキー、会社から支給されていた車、スマホなどのすべてを返還しなくてはいけなかったのだ。
1週間後からは残っている有給休暇を消化するように言い渡され、有給消化後も出社の必要なし(必要なしと書類にはっきり書かれていた)とのお達しだった。
退職勧奨ということで、退職一時金の提示はあったが、居座るんならその日数に応じて一時金を減らして行くからね、という外資にありがちな手口にも打って出て来た。
もしも辞めなかったら
退職勧奨を受け入れなかった場合どうなるのか。
当然そのことは聞いた。そして、当然のように会社側ははっきりと答えてはこない。
今までの部署にはいられないこと(当たり前だ、すでに追い出されている)、給与は下がることなどをやんわりと告げられたらしい。
給与はどのくらい下がるのか、どの部署に異動になるのか、そういったことをあらかじめ教えてくれればいいのだが、もちろんすぐに教えてなんてくれない。
粘り強く交渉すれば何かがわかったのかもしれないが、そうしている間にも砂時計の砂が落ちて行くように、退職一時金が減って行く。
まったくもって人間心理をついた上手いやり方だ。
心を病んだ同僚がいた
退職勧奨を受けたわけでもないのだが、心を病んでしまった同僚(夫より若い)がいる。会社のやり方、方針を生理的に受け付けなくなってしまったのだという。
現在は病気休職中という扱いになっているが、恐らく会社に復帰することはないだろう。
元気だった頃の同僚をよく知っている夫は、そこから何か感じることがあったらしい。
上司が異動ののち心を病んで退職
心を病んだ話ばっかりで恐縮なのだが、ここにもうひとり心を病んでしまった上司がいる。いや、いた(過去形)。
今にして思えば退職勧奨を受けていたんだな。
と呑気者の夫は言っている。
その上司、ある日突然の降格人事となったのだそうだ。理由は知らない。えっ、あの人が!と思うほどの降格、そして畑違いの部署への異動だった。
そういえばその当時、〇〇さんが××部へ異動になったんだよ、と夫が驚きの表情で言っていたのをうっすらと記憶している。
その驚きの異動から半年ほどした頃。
上司は心を病んでしまい(噂レベルなので真相は不明)結局会社を辞めた。
結局、健康をそこなうのが一番怖い
夫の元いた会社は、世間的にはブラックではないと思うのだが、なんでだろう、心を病んでしまう人がけっこういる。
最近はどこの職場でもそんなものなのか、あるいは外資特有のプレッシャーがストレスになっているのかはわからないが、そういった人たちを夫は日常的に見て来たものだから、退職勧奨となってまず真っ先に、そこの部分を考えてしまった。
次の仕事が決まらないストレスも相当のものだと思うよ。
と伝えてはみたけれど、そこから先は本人の気持ちの問題。私の出る幕はなかった。
覚悟編
それでも、会社を辞める前に今一度、これだけは覚悟したほうがいい。
給与は下がる
人それぞれなので一概には言えないが、わが家の場合は今までの給与の6割を目処に求職活動を行っている。もうこれ以上は無理の最終防衛ラインは5割!
わが家的には企業に破格の条件(笑)を提示しているつもりなのだが、それでもなかなか決まらない。
求職活動の長期化
大手転職エージェントは、登録者のサポート期間を3ヶ月で設定しているところが多い。
3ヶ月もあればたいていの人は次の仕事がみつかるし、みつからない人は求職期間が長期化する可能性が高いから更にサポートを続けても効率が悪い。そんなこんなの3ヶ月。
けれどこれは若い人の話。
50代の中高年ともなると、半年で決まれば上出来、1年でぎりぎり合格といったところだろうか。すぐに決まるなんてことは思わないほうがいい(と言いつつ、決まらないと焦る)。
契約社員・派遣もありうる
今はなるべくこの可能性に関しては頭の片隅から追いやるようにしているのだが、現実的にはこうした着地点になることもありうる。
というか。
夫と同い年の有人がすでに契約社員で働いている。
有名大学を卒業しエリート街道まっしぐらだったはずなのに、リーマンショックに遭遇。外資系企業から退職勧奨を受け退職。その後どういう経緯があったのか詳しくは知らないのだが、現在正社員でないということは、まあ、そういうことなのだろう。
まとめ
辞めるべきか、辞めないべきか。
結局のところは結果次第。転職が上手くいけば辞めて良かったとなるし、上手くいかなければ辞めなければ良かったとなるのだろう。
どちらに転ぶかはあなた次第……と言いたいところだが、こればっかりは外的要因も少なからず影響するので、見極めが難しいところ。
現在は転職市場もにぎわいを見せているので、攻め時ではあるのかもしれない。
追記:永江一石さんの書籍「ネットが面白くて何が悪い」
永江一石さんのブログ「More Access! More Fun! | 永江一石のITマーケティング日記」をご存じだろうか。
独特の切り口と、たくみなデータ解析でもって世の中の矛盾を鋭く指摘するブログだ(余談だが、私はここでキャズムという言葉を初めて知った)。
退職勧奨にあってすぐに夫に見せたのが実はこのブログ。
「中高年の転職に見る「サラリーマンは自己表現ができない」の悲劇」のエントリーは、今まさに夫が読むべきエントリーなんじゃないかと思ったのだ。
これを読んで、退職を思いとどまって欲しいな、との考えもちらりとあった。
結局夫は退職の道を選んだのだけれども、もしも今ここを読んでいるあなたが退職を迷っているのだとしたら、このエントリーはぜひ読むべき。
読んだら、下っ腹に力をいれて、がっつりと覚悟を決めよう。辞めるにしても、辞めないにしても。
ちなみにこのエントリーを含む59エントリーが収められたKindle書籍「永江一石のネットが面白くてナニが悪い!!: ブログ3年間でバズった59エントリー総まとめ」が2016年10月に発売になっている。
前作「金がないなら頭を使え 頭がないなら手を動かせ」を読んですっかり永江一石さんのファンになってしまった私は、最近のエントリーのみならず、過去ログもかなり読みあさっている。なので新刊に掲載されている記事も既読のものが多い。
が、しかし!
今回書籍化するにあたって、すべてのエントリーに4コマ漫画と永江さんの後記が付け加えられているのだ。上手いところをついてくる。
4コマ漫画は正直、老眼にはきついのだが、永江さんの後記は「ふんふんなるほど」とブログを読んでいた時とはまた違う発見がある。
ネットでここまで言う勇気のある人はなかなかいないよねレベルのぶった切り方は、読んでいてスカッとすること間違いなし。
たまに自分のことを言われているんじゃないかと身の縮む思いがすることもあるけれど、求職活動に行き詰まってふつふつしている人は、この本をじっくり読みこんで(長いけど)世の中のしくみをもう一度理解し直してみるのもいいと思う。視野を広げるって意味でもね。